師匠は猫!?ユカイツーカイな「みょうが斎の武術」
サスケやワタリといった白土三平作品に多く登場する”四貫目”という忍者が大好きで、同じ名前の忍者が登場する「忍者四貫目の死」が収録されている司馬遼太郎先生の短編集「侍はこわい」を読んだら、四貫目の話よりもはまってしまったのが短編「みょうが斎の武術」。
いや「忍者四貫目の死」も、もちろん面白く読めたんですよ。
パッとしない雇われの忍者が主人公の話で、ちょっとしたどんでん返しもありの渋い忍者同士の戦いを描いています。忍者好きの人なら間違いなく楽しめるでしょう。
もっともこの短編集は表題の「侍はこわい」(タイトルからして良い)をはじめとして、他の短編も面白いです。
ついでにいうと装丁のデザインも味があって自分としては大好きな本なんです。
その「みょうが斎の武術」ですが、舞台は幕末の大阪、変わり者の若い浪人の”みょうが斎”さんが主人公で、恋愛あり、アクションありのユーモアあふれるお話です。
あ、忍者は出てこない話ですよ。
主人公の”みょうが斎”さん、犬猫から学び習う”てんねんじねん流”という剣術を独自に編み出して、日中は土間の土の上に寝ていて、夜中に屋根にのぼったり町中駆け回ったりした後、3千回素振りするのが日課という、ちょっと得体の知れない人です。
こんな人物が出てくるというだけで、なんだかもう楽しくなってしまうのですが、舞台となる大阪の町人たちの会話も軽妙で漫才のようで楽しい。
江戸とは違い市政を町人が牛耳っていて、昔から武士の身分が軽んじられているので、主人公も町人の家主から身分下の雇われ用心棒として扱われているんですが、そんなところも興味深く面白かったござる。
ちなみに大阪では明治以降、伝説になっている有名な話らしくて、わらべ唄にもなっているそうです。
一応、最初に忍者は出てきませんよ、なんて言いましたが、この主人公、忍者もびっくりの超人的な身体能力と感覚を無駄にもっているんですよ、ムダに(笑)
出世には興味がなく、犬猫の真似をして日々暮らしていればいい、なんて天才バカボンに出てきそうな感じの人ですからね。
いやしかし、この点に関しては、忍者として、人として考えさせられる部分でござるよ。
拙者もちょっと感化されて、ニャーとかいいながら修行してたりします。
人間が本来もっていて失ってしまった獣の本能みたいな感覚を取り戻すために、昼間は土の上で眠り、犬猫の真似をする修行をした結果の能力らしいのですが、まぁ普通の武士も戦国時代に比べたりしたら、ほんとに平和に暮らしていたでしょうからね。どんどんそういった感覚は退化していったでしょう。
なんだかひ弱な現代人にも通じるところがあるような。。。日々の便利な生活の中で大切なものを失ってしまってるんだよなぁ。。
もっとも江戸時代の人々の身体能力は普通の人でもかなりのもので、お婆ちゃんでも米俵を軽々背負っちゃうみたいな感じだったらしいんですけどね。
とにかくホントに面白い話だったので、過去に映画にでもなっているかと思ったら、どうやらまだ未映像化の様子。
映画にはちょっと尺が短い気がするんだけど、そのせいだろうか。
1時間くらいのTVドラマにはちょうどいいかもしれない。
アニメの映画「じゃりン子チエ」みたいに上方の話ならではのキャスティングで作ったらきっといい感じでござろうなぁ。。
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