心が”ほっこり”っとした「忍法大全」

忍者関連の本を読んで”ほっこり”っとすることがたまにある。

でもそれは漫画や児童書であって、忍者の解説本などではまるで無かった。

当然「忍法大全」にそんな要素はまるで期待していなかった。
世界的に有名な戸隠流忍術34代目継承者の初見良昭先生の本だから、単純に勉強になればなぁ、なんて思っていたんでござる。

しかしこの本には、なんというか照れくさいんだけど、”愛”がたっぷり仕込まれていたんでござるよ。
拙者の勝手な解釈なのかもしれないけど。

もちろん武器、道具、忍術、絵画や書物など忍者に関しての貴重な写真がたっぷりな本で、資料としてものすごく忍者の為になる本です。
恐らく全て初見先生が所蔵しているものなんだろうけど、見てるだけで全然飽きないですよ。
なので最初はぼんやり写真だけをぼんやり見ていたんですが、ちらほら初見先生の師匠である高松寿嗣先生の写真が出てくる。

この高松先生が良いんですよ。

きっと拙者には想像もできないような厳しい修行だったんだと思うんですが、初見先生を指導する高松先生の姿や言葉はなんとも温かいんです。
高松先生の「初見はんな、わてのように…」といった語り口がなんとも柔らかく、もうその時点でかなり高齢の小柄な老人なんですが、弟子(初見先生は当時20代)に対する姿勢に愛が感じられるんですよね。

実際にこんなことをおっしゃられていたようです。

「人間は愛情やさかいな」

「真心やで……な……愛情やさかい」

いいですよね。愛ある師弟関係でござるなぁ。
以前、初見先生が高松先生とやり取りしたたくさんの手紙を前に先生のことを語る動画を観たことがあったんですが、初見先生も本当にしみじみ師匠のことを話されてました。

時として非常にならざるえない忍者の世界ですが、人である以上”LOVE”は大事なんでござるよ。

写真と”ほっこり”だけでなく、初見先生の貴重な言葉もたくさん詰まっています。

「本というものには、間違いがある。本は正しくないからこそ、さらにいえば嘘があるからこそ面白い」

「人間関係には虚実がある。人間関係しかり。いや虚実こそ人間関係であろう」

こんなことが書いてありました。

あ、”愛”の話の後で”虚実”のことは出すと誤解されそうだけど、それとこれとは別でござるよ(笑)

今に伝わる忍者の書物「万川集海」や「正忍記」も、わかりえないことが書いてあり、読む人のひらめきが求められているのだ、とおっしゃっています。
この「忍法大全」に掲載されている写真なども同様で、例えば水蜘蛛は履くものでなく、中に足を入れて使うものだそうです。
見たままでなく逆転の発想ができるというか、頓知がきく人でなければ忍者としては務まらなかったわけだ、と言っています。

これはなるほど、と思いました。
甲賀の川上先生もおっしゃられてたんですが、本になったり伝承された時点で間違ったり、嘘が入ったり適当だったりすることもある。
あまり外に伝えたくなければ、あえてわけ分からんようにすることもこともあったろうし。

でもその中にヒントはあるんですよね。

忍者に限らず、この現実世界の”虚実”の中で、柔軟に生きていくのは大切でござる。
blogに誤字や間違いを発見しても目くじらたてたりしないでござるよ(笑)

おっと。
ちょっと”ほっこり”していい気持ちになってしまい長くなってしまったのでこの辺で。
興味ある方は是非「忍法大全」手に取ってみてくださいね。

では。ドロン!

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